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大手すら陥落する時代の「中小企業セキュリティ生存戦略」:自前EDRから予防ファーストへの転換

カドカワ、アサヒビール、アスクル……。名だたる大企業がランサムウェアなどのサイバー攻撃により、甚大な被害を受ける事例が後を絶ちません。潤沢な予算と人員を持つ大企業ですら防ぎきれない今の時代、私たち中小企業は一体どうやって会社を守ればよいのでしょうか。

私は地方企業の情シスとして、限られた予算とリソースの中でセキュリティ対策に向き合ってきました。今回は、「予算ゼロからの自前対策」と「実運用に耐えうる商用製品の導入」という2つのフェーズを通じた、中小企業向けの現実的なセキュリティ構築アプローチについてお話しします。

1. 中小企業が直面する「2つの壁」

セキュリティ対策を進める上で、どの企業も必ずぶつかる壁があります。

  1. セキュリティ人材の不足:専任のセキュリティ担当者を雇う余裕はない。
  2. 予算の壁:「実際に何か起きないと予算が降りない」というジレンマ。

特に2点目は切実です。経営層に「安心」への投資を説得するには、具体的な「脅威の可視化」が必要です。そこで私が最初に取り組んだのは、自前での監視システムの構築でした。

2. フェーズ1:予算をかけずに「脅威」を可視化する(自前EDRの構築)

まずは「現状を知る」ことから始めました。高額なソリューションを入れる前に、手作りで仕組みを構築しました。

  • 検知の仕組み: Linux/Windowsサーバー上で、パスワードクラック(総当たり攻撃)やポートスキャンを検知するプログラム(デテクター)を稼働。
  • 集約と可視化: 検知したアラートを社内の PostgreSQL データベースに集約。
  • ダッシュボード: データの可視化ツール Grafana を連携させ、攻撃の状況をリアルタイムでグラフ化。

これにより、いわゆる「自前EDR(Endpoint Detection and Response)」のような環境を構築しました。 「うちは地方の中小企業だから狙われない」という神話は、Grafanaのグラフが右肩上がりに跳ね上がるのを見て崩れ去ります。この「可視化された事実」こそが、次のステップへの予算獲得の武器となります。

Grafanaは無料で構築可能です

3. フェーズ2:運用限界と「予防ファースト」への転換

自前システムは検知には役立ちますが、防御や駆除までは自動化できません。また、Windows標準の Windows Defender は優秀ですが、集中管理機能(ダッシュボード)が弱く、「今、組織全体で何が起きているか」を把握するには不十分でした。

限られた情シス担当者の人数で、すべてのアラートに対応するのは不可能です。そこで、「攻撃されてから対処する」のではなく、「攻撃を未然に防ぐ」 アプローチへの転換を決意し、EPP(Endpoint Protection Platform)製品の選定に入りました。

選定した解:Deep Instinct(ディープインスティンクト)

数ある製品の中から私が選んだのは、Deep Instinct です。

  • 予防ファースト: ディープラーニングを活用し、実行前に脅威を検知・ブロックする。
  • 運用負荷の軽減: 誤検知が少なく、事後対応の手間を大幅に減らせる。

中小企業にとって最も怖いのは、攻撃を受けた後の「復旧コスト」と「業務停止時間」です。だからこそ、入り口で止める「予防」に特化したこの製品が最適解だと判断しました。

4. 導入支援の現場から:システムを止めない展開フロー

どれだけ優れたセキュリティ製品でも、導入によって業務アプリが動かなくなっては本末転倒です。コンサルティング的な視点で重要なのは、「業務への影響を最小限に抑えつつ、確実に守りを固める」 導入計画です。

私は以下のようなステップで、慎重に展開を進めています。

  1. 情報システム課内での試験導入: まずは自分たちのPCで、誤検知や動作の重さを検証。
  2. 本社システムへの展開: 物理的にサポートしやすい本社エリアから導入。業務アプリとの競合を入念にチェック。
  3. 地方支社への展開: 遠隔地でも問題なく動作することを確認し、全社へ。

このように、スモールスタートで実績を作りながら範囲を広げることで、現場の混乱を防ぎながらセキュリティレベルを底上げすることができます。

5. 地方から「最前線」の情報を取りに行く

私は田舎にある本社で活動していますが、セキュリティのトレンドは日々変化しています。Webの情報だけでは得られない「生の声」や「他社の失敗・成功事例」を得るために、東京ビッグサイトなどで開催される展示会には積極的に足を運んでいます。

「情報は足で稼ぐ」。 会社が情報収集のための出張予算を出してくれるのは、これまでの自前構築や運用実績への信頼があるからだと感謝しています。そこで得た最新の知見を、自社のシステム、ひいては将来のお客様へと還元していくことが私の役割だと考えています。


まとめ:中小企業のセキュリティは「伴走者」が必要

セキュリティ対策に「銀の弾丸(これさえ入れればOK)」はありません。 予算やリソースに合わせて、「まずは可視化(自前)」→「要所の強化(商用製品)」と段階を踏んでいくことが、中小企業における最適解です。

もし、自社のセキュリティ対策に不安をお持ちの企業様がいらっしゃれば、実体験に基づいた導入支援や選定のアドバイスができるかと思います。単なるツールの売り込みではなく、業務を守るための「戦略」を一緒に考えましょう。

hanako